やぶにらみBSC考

      読みながら感じた疑問点と、
それに対する自分なりの理解と納得、
「要は」とそれなら「どうする」

公江 義隆 (コウエ ヨシタカ)
(ITコーディネータ、ITコンサルタント、もと武田薬品工業(株)情報システム部長)


まえがき

F+Sフォーラムの主宰者の西嶋さんから「何かありませんかね〜」と寄稿依頼のメールを戴いた。数日後、BSCフォーラム資料と「バランススコアカード経営――なるほどQ&A」(中央経済社)なる書籍が送られてきた。西嶋さんにすれば、半隠居暮らしの私に「少しは勉強をしないか」と云う、いつもの親切の延長であったと思うが、何しろタイミングが良すぎた。「BSCをどう思うか」を書けとの指示と受け止めた。

BSCについてはITCの研修でインストラクションの為、松原先生の書かれた本「バランス・スコアカード経営」(日刊工業)を1冊斜め読みしたぐらいの知識しかない。

以前にこのフォーラム・レターでも「…易しい日本語で」などと書かせていただいたが、私はアルファベット3文字が大嫌いである。

しかし、相手はバランス・スコアーカード・フォーラムの事務局長さんでもある。またF+Sフォーラムには高橋さん(日本フィリップス)など、BSC実践の権威がおいでになる。覚悟を決めて新たに本を2冊買ってきた。考え方については創始者の著作に限ると(HBR、DHBのバックナンバは見つからなかった)バランストの“ト”が気になったが、キャプランとノートンの本「戦略バランスト・スコア―カード」(東洋経済新報社)、これは考え方や経緯を知る為に前半を読み、うしろのほうはリファレンスということにして、目次の項目と要約から内容を想像することで横着を決めこんた。もう1冊は書店の棚にならんでいた中では一番易しそうに見えた吉川先生の「バランス・スコアカード入門――導入から運用まで」(生産性出版)、こちらは乗り物のなかでも読める。

夫々の本で少しずつニュアンスの違う点があったりするが、長年企業の現場で「要は」と「それでどうする(決定)」ですごしてきた人間にとっては、細かい違いはどうでもよい。最初の意気込み―――腕まくりして格闘のつもりが気力が続かず、結局「要は」と「それでどうする」の雑駁なレベルに留まってしまった。そんな事で、一般の企業ユーザーの立場に立ち戻ったつもりで、こんな話があったらどう受け止めたであろうかを想像しながら、個人的感想を述べお茶を濁させて戴く事とした。

浅学+頭の固くなったオールドタイマーである。理解不足、誤解もあるかとも思う。皆様には是非、問題点のご指適・ご教示をお願い出来れば幸いである。 

1・「これって、新しい考え方?」

財務、顧客、業務プロセス、人材の4点に項目を具体的に決めたことは別にして、このような二律背反(トレードオフ)の問題のバランスをどうとるかは、従来から経営者にとっては日常の普遍的問題である。また組織をあづかる管理者全てにつきまとう問題でもある。自分自身の経験を振りかえってみても、30年も昔、管理職になった途端に直面したのは、人不足の中で、目先のプロジェクトの効率(財務視点)と要員の教育(人材視点)をどうバランスさせるか、ユーザーサービスレベルとコストや要員のモラルのバランス、業務プロセス改善の1次的コストアップや効率低下と改善後の長期的効果のバランス、…等などの問題であった。その後、立場はかわって問題の種類やレベルは変わっても、意思決定の悩みのほとんどは、突き詰めれば“トレードオフ“に起因すると言っても過言ではなかった(そうでなければ、誰が決めても同じ結論になる)。 

「業務プロセスを改善して競争力をつけ、従業員を教育して質を高め、顧客満足を通じて信頼を得て業績を向上させる」と至極当然の論理として本には書いてある。理屈はそうかもしれないが、実務の現場にすれば、目前の仕事を犠牲にして多大の人的エネルギーとコストを使って実現は2年先になるという業務プロセスの改善に注力し、多忙な中から工数を割いて従業員教育を強化し、新製品開発や気まぐれな顧客満足を得る為の諸施策に、僅かな利益の中から多大の費用と時間を使って3年後の業績向上を期待するが、気の短い投資家は3年後より、これらの施策への投資の為に減った今期の利益を気にして株式を売り払う、こんな姿が現実である。「だから、そんなに簡単に旨くなんか行かないよ」と言う意見と、「だからこそ、こんな考え方を積極的に取り入れないといけない」という意見が出てくるだろう。財務は遅行指標、それ故先行指標として他の3つが必要と本には書いてある。しかし現場の感覚からすれば、何か新たな施策をやると決めた段階で新たな将来コストの発生を認めたことになる。その意味で、財務の中でもコスト部分は遅行とは云えない面がある(効果部分は結果=遅行である)。

話題の経営品質云々論議には、あまりにも業績主義(財務――株価視点)に陥った昨今の企業経営を、何とかしないと行けないという発想も背景にあるかに聞く。

自分なりの結論

安心な点―――現実的・普遍的な問題を対象にした、普通に理解できる方法・考え方。

留意点――――既にこの種の問題を長年扱ってきた人(ベテランの経営者、経営スタッフ、管理者など)にとっては、新たに取り組んでも得るところは少ない。

       この人達は頭の中に既に固有の方法論を作り上げている。彼らにとって方法論は既に問題では無く、具体的な課題で最適なバランス(空間・時間上の資源配分)をどう取るかが問題であることを十分認識している筈である。

       BSCは考えるための土俵であって、バランスの取り方までは教えてくれない。

    新しい経営の考え方のように説明した為、相手の経営者の逆鱗に触れ、出入り差止め?になったコンサルトの知人がいる。

どうするか―(A)新しく組織の管理や経営問題を取り組む立場になったが、まだ方法論を持たない人には、過去の先輩同様に暗黙知の世界であれこれ考え悩むより、この方法で考えたり勉強するのも一法。

   (B)経営課題のブレークダウンと実行管理を全社運動的にやる場合など、関係者共通のわかり易い方法論として活用するのも良い。 

2・財務、顧客、業務プロセス、人材、の4つの項目は最終目標?

BSCの出発点が企業の評価指標であった点を考えれば、これら4つが最終目標と言うなら話はわかり易い。或いは、もっと抽象的な企業ビジョンが頭にあり、このビジョンをブレークダウンして4つの指標で具体的にあらわしたという見方でも良い。 

自分なりの結論

良き企業市民として社会から期待される姿としての、非数値目標もあるというのなら理解し易い。このような考えなら“環境問題”などが、5番目に付加されてくるのかもしれない。生き残ってきた経営理念が明確な伝統企業や、戦後まもなく作られた“創業者の夢の実現”を原点に置く企業などでは、このようなケースが十分考え得ると思う。

この考え方なら、非財務指標は企業の“姿勢”を表していることになる。

一方、最近の“お金儲け”が設立目的のような企業、市場原理主義を信奉する企業や社会では、最終指標は“財務”だけと言うことになる。強いて云えば、残りの項目は極端なマイナスを作らないために見ておくという位置付けかもしれない。

この考え方なら、評価指標には現在と将来の2つの財務指標があり、将来の財務状況を作り出す要因を表す非財務指標で、将来の財務指標を代行させたという見方も出来る(ややこしい話ですみません)。 

3・昔のエクセレントカンパニー論と同じ?

企業の長期的な成長の条件として、非財務項目が大切と云う考え方は理解出来る。

でも、それなら「これって、20年も前の“エクセレント・カンパニー”の話と同じじゃない?」

非財務項目が成長の要因・条件とするなら、10万人単位の首切りで自らエクセレンスを切り捨てて生き返ったIBMは?、優良子会社を手放し会計疑惑まで取り沙汰されるゼロックスの落ちこみは?、人件費と研究開発費のカットで利益をかせぐ金融業シフトのGEは?、子会社の売上の計上方法が問題視されている“尊敬される会社”トップの常連であったメルクは?…・等など、かってのエクセレント・カンパニーの現状をどう説明出来るであろうか。

また、新しいタイプの企業の代表、マイクロソフトやオラクルをどう評価すべきであろう?

今ではすっかり冷え切ってしまったが、バブル期の日本企業のメセナ・ブームをどう解釈すべきであろうか? 

自分なりの理解

企業の成長と財務以外の非数値指標項目との因果関係は否定しないが、多分に結果論的なところもあるように思う。

経営者個人、企業組織(法人)を問わず、行動結果にマズローの欲求段階説を感じることがある。最近の企業の不祥事などを見聞きするにつけ、現実問題として「衣食たりて礼節を知る」、「貧すれば鈍する」も否定できない。 

先行投資は良き将来を得る為の必要条件であっても十分条件ではない。このギャップを埋めるものとして、(1)将来の環境変化に対する洞察力、(2)的を射た戦略、(3)関係者の強い意思と努力、等があると思う。(1)に対してBSCは無力であろう。(2)に対しては戦略のロジックが厳密でない、戦略そのものが曖昧…と言ったような問題が現状にあるなら、欠陥(マイナス面)を少なくする効果はBSCに期待できると思うが、プラス面を作り出す効果は、手法そのものより携わる人の資質によるところが多い。但し、問題がある程度具体化した段階や戦術面ではBSCを用い衆智を集める方法を採ることによる、プラス面の創造がある程度期待出来そうな気もする。最も効果の期待できそうなのは(3)の関係者の意思、努力面への効用と思う―――書物には“戦略を全社員の日々の業務に落とし込む”とある。

現在の多くの企業には、大変厳しい目標の達成が求められている。困難を前にしてこれに携わる人たちの意思が結果を大きく左右する。人間誰しも、良く分らないことや自分の役割が理解できないことには一生懸命にはなれない。BSCを多くの社員の参画と動機付けの方法と位置付けると相当の効果が期待出来そうな気がする。 

4・戦略的経営システムか?

評価システムとしてなら分り易かったBSCが、このあたりから話がややこしくなってくる。

企業の評価を「財務指標のみでなく、4つの視点からすべし」というなら、これは一つの“考え方”である。しかし、「すべての業績評価指標は因果関係のリンクをを通じて最終的には財務成果に結びつくように構成される必要がある」という話が出てくると困ってしまう。全ての企業の活動はプラスにかマイナスにかは別として業績に影響を及ぼす。ここでわざわざこんな話が出てくるのは、こんな当然のことを云っているのではない筈である。結局は財務だけが最終目標であって、他の指標は補助指標に過ぎない、あるいは他の指標項目に関する施策は、財務に貢献する為の施策という意味にすぎないと言っていることになる。非財務指標の3つは何だったのか?

1980年代以降の株価至上主義の米国企業社会を反映した結果なのか、戦略経営システムなどへの展開のため、手法としてのBSCに傾斜した結果なのか? 

BSCを手法として見ると、一つの課題目標に対し、これを達成する為の幾つかの重要成功要因(CSF:Critical Success Factors)に分解し、これらの達成状況を示す重要業績評価指標(KPI:Key Performance Index)を設けて管理する、問題が大きければこのプロセスが階層構造になるだけと言う、仕組みとしては極めて単純・わかり易いものである。

しかし、経営や管理の問題をきっちり捉えて解決していく上で、CSFが戦略課題、重点施策等、KPIが達成目標などと名前が変わっても、従来から大抵の場合このような構造で問題に取り組んできたのではないだろうか。

読んだ本の中に、BSCは導入していないがBSCの考え方を使っている…と言った表現があったが、手法としてみるならば話が逆のような気がする。 

自分なりの理解と結論

最終の評価指標に財務指標は除くことは出来ないが、他の指標を加えるか、それらの重みはどう考えるかは経営理念の問題であり、各企業が独自に設定すべき問題であろう。財務視点を原点に置くなら、その次ぎのレベルで扱うべき指標は、その企業の描くビジョンや戦略によって自ずと決まるものと思う(顧客、人材、業務プロセスが含まれる可能性は高いが)。

BSCを手法として捉えるならば、これは一種の目標管理(目標設定と実行管理)の手法と捉えることが出来る(この場合、4つの項目にはとらわれない)。

基本的なところで、従来の方法と大きく変わるものではないから、また、難しい考え方ではないから手法としての導入は比較的容易であろう。

仕組みのシンプルさが幅広く色々の問題への適用を可能にしている。

戦略問題を対象に適用すれば戦略経営システムの一翼を構成することになるし、IT分野に適用すれば、情報化の計画と管理の仕組みのベースということになる。

必要な場合に、世に数多くある目標管理手法のデファクト・スタンダードとしてBSCを用いるのも悪くないという気がする。 

5・戦略レベルで使用する場合の留意点―――――自分なりの結論

実践という面から云えば、BSCの検討や研究はこれを使う対象の検討・研究につきる。

BSCそのものをいくら精緻に勉強しても、それが実践面の効果にそれほど役立つものではない。

同種の問題を手がけてきた経験から、良い結果を得る為に必要と思われる留意点の幾つかを以下に挙げてみた。

ただし、これを旨くやるハウツウは知らない。色々考え、想像し、仮説を立て、実践で経験を積む中で養われていくセンスや勘のようなものがあるように思う。まだ暗黙知の世界である。

但し、次の2点は出発点での最低条件である。

(1)求められていることは何かを的確に理解する。

(2)道具を旨く使う為には、使う対象をよく理解出来ていることが必要――つまり、企業の環境を理解する、問題を理解する、仕事、組織、人、…を理解する。 

留意点

〔1〕・SCF別、時間軸上での効果発現と資源配分条件の明確化

経営戦略レベルの問題では、機能や部門単位では異なった色々の選択肢のある施策の中から、会社として一つの目的・目標に向かった戦略ストーリー(書物では“戦略マップ”)に適合した施策を絞りこんで行くことになり、多くの場合、複数の部門や機能に跨った多段階のプロセスになる。全ての最終工程が上位工程からの要求どうりに実行されて始めて、戦略目標が達成出来る事になる。

(1)各CSFの完了時期は、相互の関係を踏まえて的確にスケヂュ―ル管理される必要がある。

(2)   限られた経営資源を何処まで先行投資に配分するか、先行投資分の各CSFへの適性な配分を誰がどう決めるかが重要な要件になる。

(3)   KPIと資源配分が、施策を実行していく人達から“妥当”と思えるもにであることは、大変重要である。 

〔2〕・CSFの選択がこの問題のCSF

上位工程から与えられた項目・目標を実現する為、下位工程への課題となるCSFの条件について:

(1)論理的な整合性――――これは当然のこととしてほとんどの人は意識するだろう

(2)数は3つ(3本柱)から精々5つ―――これ以上になると何をやろうと言うのか、直感的理解が出来なくなる。直感的理解が出来ないと発想の展開が出来ない。

(3)3本柱の選び方(1)――――3本テーマの具体化を考えていく、実行していく中で、他の数多くの解決すべき問題が、3本のどれかに吸収されていくように選ぶ。

(4)3本柱の選び方(2)――――CSFが、下位工程、またその先の下位工程に展開されて行く中で、下位工程のCSFやKPI相互のコンフリクトが生じない選び方をする。

(5)CSFと実行組織体制のマッチング―――顧客視点の問題は営業部門、人材問題は人事部門でというように単純には行かない。具体的な色々の問題がCSF(テーマ)を跨って、組織を跨って発生してくる。対処方法には次の(A)〜(C)がある。

(A)最上位の企画段階で上記(4)を徹底的に意識して、前提として条件を徹底的に詰めておく(計画段階で相当具体的レベルまで検討することになるので、余程全体を熟知した人がいる場合以外には現実的ではない)。(B)各工程を色々の部門の人からなる構成(クロスファンクショナルチーム)にする。(C)各工程の責任者に他の工程とのあらゆる調整責任を負わす。いづれにせよ調整・確認には相当の能力と努力が必要になる。

なお、CSFやKPIだけで必要情報が伝わるものではない。関係者が問題の背景を十分に理解出来ていることが何より大切になる。

〔3〕要の要は

色々のことをあれこれ考えてみたが、日本の現状を見渡すと、「BSCを導入すべきか否か」、「BSCを如何にに進めればよいか」…・といったことが問題の核心ではないようである。「経営トップが明確なビジョンや戦略を描ききれているか、本当にそれを実行に移し、やり遂げる意思があるのか」、「部門責任者には、現在の既得権を捨ててでも、改革を推進する覚悟が出来ているのか」が目の前にある関門のように思える。解決すべき問題の側からみればBSCがCSFではない! 道具としてのBSCには、経営者や管理層の意識を変えさすほどの力は残念ながらない(How to からWhat やWhyは出てこない)。BSCを推進しようとするなら、先ずこのことを踏まえて経営トップや管理層にあたる必要がある。「具体的にどう進めるのか?」と云う問いの出たときがBSCの出番である。 

6・終りに

本やの片隅に、少し前にベストセラーになったTOC(Theory Of Constraints)の読み物、ゴールドラッド博士著「ザ・ゴール」が数冊積んであった。

このTOC、「工場の生産性はボトルネック工程の能力以上には絶対向上しない」と言う理論である。「日本が今以上に強くなると困るから、今まで教えなかった」理論なのだそうである。でもこんなことは30年前から日本の製造現場で生産管理に携わる人の常識であった。

こんな本がベストセラーになることが気になった。

“ボトルネック”工程を化学関連の分野では日本語で“律速”工程と呼んでいた。日本語なら2字で表せる理論である。しかし、ワープロの仮名漢字変換では“律速”という言葉は出てこなかった。

現場では常識であったが、現場の暗黙知に留まり、他の職場の人や経営者の知るところではなかったのかもしれない。製造現場の人はサプライチェイン全体まで気を配ることはしなかった。暗黙知を形式知化して多くの人が共有出来るようにもっと努力すべきであったのかもしれない。

BSCで扱う種類の問題についても、もしかしたら同じようなことが云えるのかもしれない。

従来なら終身雇用の下、十分な時間をかけて継承が出来た、暗黙知レベルの重要な知識や知恵が、世代交代の中で組織の中から急速に失われつつある。

大学の先生や研究者の方々には今、外国の文献の研究より、日本の現場の研究を是非ともお願いしたい。 

7.ヤブ睨みBSC考――補遺 

先行投資が企業の長期的成長にとって必要条件であっても、十分条件ではないと言ったような事を書いた。十分条件は何かが気になっていた。

特異な企業の成功ケースに理屈をつける、昨今流行りの“成功物語”作りはあまりフェアだとは思わない。

成功した企業、成功しなかった企業の両者について長期的な施策と業績を調べてみればよいのだが、こんな面倒なことは怠け者の私にはとても出来そうにない。 

株価は短期的には大きな振れもあるが、長期的には企業の業績や成長をあらわしていると考えてみた。

様々な相場やバブル崩壊をくぐり抜けて105000ドルから300億ドル以上の富を築いたという米国の株式投資家について――M・バフェット他著「ウォーレン・バフェットの銘柄選択術」なる書籍が日本経済新聞社からでている(バフェットに関しては他に数種の著書がある)。

上記の著作から引用すると、彼の投資ルールと考え方は簡単に言えば次のようなものである。

インターネットであれ、バイオであれ市場を風靡した相場は避けて通る。

(株価は僅かな材料で大きく振れるので)悪材料で株価が下がった時に優良企業株を買う。

相場はBSCとは関係の無い問題であるので、優良企業とは何かに焦点をあててみる。彼の云う優良企業とは“コモディティ型:他と差別化出来ない低付加価値の事業を行っている企業”と、“消費者独占型:ブランド価値が高い、取り扱う製品が強い市場支配力を持っている企業”に分けた後者のことである。航空会社、鉄鋼,自動車などは前者である。「コモディティ型の業界では低コスト企業が生き残る。そのため本来、企業の価値を高める効果の大きい新製品開発や企業買収に使われるべき資金が、たえず(コストダウンの為の)設備投資に使われ、それが収益を圧迫する。A社の合理化の脅威にさらされたB社もそれに対応して、同様の合理化を行いシェア維持を狙って価格の引き下げを行う。結果的シェア―の変動は起こらず、利幅が低下する悪循環が繰り返される。

このような業界にも時々良い風が吹く時がある。各企業は供給力を増やす為大きな設備投資を行い、従業員の賃上げ要求に応じる。やがてブームがされば過剰な生産設備と高賃金の従業員が後に残される。コモディティ型の事業では経営陣の質とレベルが相当高くなければならない。先見性を欠き、経営資源の配分を誤ると、低コストメーカー熾烈なコスト競争の餌食となり、…… 

マイケル・ポーターの競争戦略論を読んでいるように錯覚しませんか?

現在の、日本のことを云われているような気持ちになりませんか? 

BSCの最初の戻り、問題は4つの評価指標やこれを基点に考えれば良いといった単純な話しではない。その裏の戦略や施策が鍵なのである。実際には大変難しい事である、あたりまえのことをキチッとやる、やったことを見えるようにするツールと考えてはどうであろうか。


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